2つの時間
- 15 時間前
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人は、頑張ることで前へ進める時期がある。
目標に向かって走ることが必要な時期。
挑戦することで景色が変わる時期。
自分を奮い立たせることが、
在りたい未来へとつながる時期。
そんな時間は、人生の中で何度も訪れる。
できることなら、そのままずっと頑張り続けたい。
けれども、不思議なことに、
そのやり方でここまで来たはずなのに、
ある日ふと、前へ進めなくなることがある。
身体がやけに重い。眠っても疲れが抜けない。
あるいは頭の中で考えごとが途切れず、
同じ場所をぐるぐると巡り続けているような感覚。
やる気がなくなったというより、
「このまま走り続けて大丈夫なのだろうか」
そんな問いが、身体のどこかに静かに居座り始める。
気づけば心と身体だけが、日々の時間から少し
遅れて歩いているように感じる。
時間だけは絶え間なく流れ、
心と身体はその流れから少しずつ離れていく。
そんな時、多くの人は、さらに頑張ろうとする。
今までそれで前へ進んできたのだからと、
もう一度自分を奮い立たせようとする。
けれど、本当に必要なのは、
さらに頑張ることではないのかもしれない。
いったん立ち止まり、
流れていく時間を少し離れた場所から眺めてみる。
時間との付き合い方を変えてみる。
自分だけが取り残されたように感じることもある。
それでも一度だけ、
自分の身の回りへ意識を戻してみる。
日常の半径五メートル。
身体を整える。
呼吸を整える。
生活のリズムを整える。
手触りのある日常の半径五メートル。
そこが今の自分の世界であり中心。
そんなことをしている場合じゃない。
そう思うかもしれない。
けれども、そう思う時ほど、
一度だけ立ち止まって問いかけてみる。
今、自分が「当たり前」だと思っているこの日常は、
本当に自分が望んだ時間の過ごし方なのだろうか。
自分の身体を含めた半径五メートルは、
大切にされているだろうか。
気づかないうちに、
余計なものが積み重なってはいないだろうか。
気づかないうちに、
自分自身を雑に扱ってはいないだろうか。
静けさの中に身を置いてみる。
すると、景色そのものは変わっていないのに、
世界の見え方が変わることがある。
半径五メートルの風景が、
少し違って見えることがある。
問題が解決したわけではない。
自分が別人になったわけでもない。
ただ、自分が立っている場所から見える景色と、
そこに流れる時間が、少しだけ変わったように感じる。
人は、新しい何かを手に入れることで
前へ進むこともある。
けれど、ときには、余分なものが静かにほどけ、
自分らしい時間の流れの中でしか進めない時期もある。
それで良い時もある。
また走りたくなったら、その時に走ればいい。
大切なのは、
時間の流れは一つではないということ。
前へ進む時間もある。
立ち止まることでしか進めない時間もある。
どちらも人生に流れる大切な時間なのだから。
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Words by Tatsuya Sakamoto