著者は子供が生まれた瞬間に体験した、不思議な時空を表すための
言葉をこの本を書く一つの動機として求めていて、
自己と世界が背景に融解していく安堵の正体でもあると冒頭で書いている。
僕はこの言葉にとても共感を感じた。
僕も常日頃、世界と自分を隔てる境界線のようなものが溶け合う瞬間の
心地よさを探し求めていて、そのための思考や身体のバランスの重要性を
大事にしている。
言葉にうまくできない表現を著者のような人がしっかりと
自身の体験と歴史を紐解きながら言葉にしてくれる安堵感は、
読者としての快感は計り知れない。
世界と自分の境界線の融解は、身体感覚だけでなく、
言葉を交わす人のコミュニケーションの中にもそれはある、という。
人と人は決して分かり合える存在ではないけれど、その分かり合えなさを
受け止めそれでも共に在るということを理解するためにコミュニケーションが
存在している、と。
一部であり全部でもあるような感覚の体験は、
まだまだこれからも僕自身のテーマとなりそうだ。
とにかくこの本は何度でも読み返したい。
「未来をつくる言葉」
ドミニク・チェン
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